2019/10

By Robert McClarin, Vice President, Strategy


ロイヤリティプログラムにおいて、ボーナスポイントの獲得機会を顧客に提供することは、集客増、来店・利用頻度の向上、購買単価の増加、または顧客に日頃の感謝を示すのに効果的な手法であり、これらは企業のロイヤリティ戦略担当者の間では、良く利用されている手法である。一方、弊社が企業のロイヤリティプログラムのコンサルティングを実施する中で、会員への価値提供や売上拡大に熱心になるあまり、ボーナスポイントの提供に関する3つの典型的な失敗パターンに陥る企業を多数見てきた。


具体的には、「ロイヤリティプログラム構築における曖昧なゴール設定」、「訴求力に欠くボーナスイベントのメッセージ」、「ボーナスポイントの乱発」である。


それぞれについて詳細と対応策をみていくこととする。


ロイヤリティプログラム構築における曖昧なゴール設定


ボーナスポイント失敗の第一に挙げられるのが、ボーナス提供のゴール・目標設定が曖昧であるということである。具体例を見てみよう。


X社は、例年、春夏秋冬の商戦期にポイントが2倍になるボーナスキャンペーンを実施している。イベントは、集客増を目的にして、全店舗・会員を対象としているが、事後的な効果分析ができていないのが課題だ。


以前の週に比べて客足に伸びはみられるものの、前年度の同時期の数値と比較して、会員の購買回数や売上に大きな増加はみられなかった。イベントが無かった場合と比較することが困難なので、ポイント2倍の春夏秋冬の商戦期イベントが、どの程度購買回数や売上に影響をもたらしたのかを測定することはできないからだ。イベントを開催しなかったら、客足が減っていた可能性もあるので、イベントが売上増の要因となっていたのかもしれない。


また、春夏秋冬の商戦単体で効果が充分に見込める場合、追加でポイントが2倍になるボーナスイベントを開催する必要性はない。加えて、来店頻度が低く、今回のイベントにも参加しなかった会員の多くは、従来のコミュニケーションチャネルには関心を持たず、店内の案内を見ていない。この状況を打破するためには、ポイント2倍にも勝る、訴求力のある何か別の手段を用意する必要があるかもしれない。


では、どう対応すればよいのか?事前に期待成果を明確に定義し、成功の評価基準について合意した上で、これらの目標を測定・達成できるように、ボーナスイベントを設計する必要がある。上記キャンペーンの例では、比較対象を設けていないので、ボーナスイベントが集客増に寄与したかどうかは分からない。


具体的かつ計測可能な目標が未設定ということは、チームは何が収益増の要因になったのか、またさらなる売上拡大のためにイベントをどのように設計すればよいかが分からないということになる。


訴求力に欠くボーナスイベントのメッセージ


企業のロイヤリティプログラムには、ポイントやランクに関するボーナスイベントを特徴としているものがいくつかあるが、それらのプログラムはコミュニケーションに関して重要な、「認知」「特別感・希少性」および「パーソナライズ」の3つの視点を見落としていることがある。


「認知」:

企業が開催するバーゲンやポイントアップイベントを認知していない会員の割合は、全会員のうち50%に上るとみられる。


これら企業が保有するロイヤリティプログラムは、特徴のない文章のEメールや、イベント開催を伝える画面表示をするのみで、あとは会員が何らかのアクションを起こすことを期待するといった程度になっている。ロイヤリティプログラムの担当者は、会員がイベントの開催を把握できるために必要なチャネルを利用していない。


SMS、PUSH通知、アプリのポップアップ、クローズドループ広告、ソーシャルメディア、Web、さらには試験的にダイレクトメールを送ってみるなどしてみたらよい。もしそのボーナスイベントがプログラムにとってキーとなるイベントであるならば、会員がその価値を確実に受け取れるように、あらゆる措置を講じてみることが重要だ。


「特別感・希少性」:

行動心理に最も訴えかけるもののひとつに損失回避思考(Loss Aversion)がある。何らかの権利を逃して残念という気持ちは、何かの権利を獲得した喜びの2倍にもなると言われている。

企業は、自社のロイヤリティプログラムにおいて、イベントについての通知・メッセージ送信の場面でこの心理効果を活用すべきである。たとえば「今週末のポイント2倍キャンペーンをお見逃しなく」という表現は、「今週末ポイント2倍獲得できます」と比較してより訴求力がある。さらに、「会員限定」のメッセージが入っているものは、顧客ロイヤリティを生み出す上で重要な認知向上に役立つ。


「パーソナライズ」:

全会員に向けて、継続的にポイントがX倍になる一律のボーナスを提供するよりも、会員それぞれに向けて、その会員に関連性の高い内容のボーナス獲得機会を盛り込んだほうが良い。

例えば、ボーナスイベントの日程に関しては、会員に好きな日程を選んでもらえるようにする。購買行動や製品群および時間帯毎に、いくつかのポイント倍率をテストしてみる。そして、これらのパーソナライズされたボーナス獲得機会を会員に向けて直接発信する際には、「特別な会員様限定の・・・」等の文言を使うことで、会員に対して一個人として扱っているという感覚を与えることができる。


ボーナスポイントの乱発


残念ながら、動機付けに効果的な手法を乱発しているロイヤリティプログラムを目にすることがある。これは、長い目で見るとプログラム全体の効果を薄くする可能性がある。過度な使用は、さまざまな観点からみてプログラムに悪影響を与える。

乱発により、プログラムで使用されているポイントの価値を弱める可能性がある。会員は、通常ポイント獲得だけではしだいに物足りなくなり、結果、次のボーナスポイントイベントをただ待つといった状態になる恐れがある。


米国では、ポイントとロイヤリティに関する新たな会計規則が施行されたことに伴い、ボーナスイベントの開始によって、収益認識に影響を与える可能性があるということも把握しておく必要がある。各イベント前準備の一環として、その見積もり評価も必要になる。


※注
米国会計基準と国際会計基準での施行を受け、日本においても2018年3月に「収益認識に関する会計基準」が公表され、その中でポイントに関する会計処理も例示されている。日本企業でも、従前の処理とは異なった対応が必要となる点を留意しておく必要がある。

特典の獲得と利用が繰り返されることは、顧客の定着率を改善するのに不可欠である一方で、過剰な特典提供は、特典還元率が増加し、プログラムの収益を悪化させる。集客や顧客の行動パターンを変えるために、ボーナスポイントを乱発している企業は、他の手段を検討するか、プログラムのコアとなる提供価値の評価をしてみることを推奨する。



まとめ


ボーナスポイントを使ったロイヤリティプログラムに陥りがちな失敗として、次の3つが挙げられる。


ロイヤリティプログラム構築における曖昧なゴール設定


明確な評価基準をもって開始できれば、ボーナスポイントのイベントをより良く構築でき、期待した結果が得られるようになる。



訴求力に欠くボーナスイベントのメッセージ


会員がボーナスポイント獲得の機会を充分に把握できるようにする。「限定・希少性」の効力をもって会員にアクションを促し、最大限の成果を得るべく、ボーナスポイントイベントのパーソナライズを検討する。


ボーナスポイントの乱発


米国の新たな会計規則、および会計規則がプロモーションに与える影響を把握しておく必要がある。過度な特典還元で利益の悪化を招かないようにする。また、顧客行動への影響力を維持するためには、ボーナスイベントの使用は控えめにする。



これらについてお悩みの事項等あれば、ぜひ弊社までご連絡ください。